わたしの母は明治４０年/1907年生まれで白寿。数え年なら百歳です。先日、母の嫁入り（７５年前）当時の小物の整理をしていたら珍しいモノが出てきました。母が産まれたときに父親が克明《こくめい＝こまかく》に付けていた育児日記です。Ｂ５版の和綴じ《わとじ＝日本風の本の閉じ方》の手帖に誕生した明治四十年十二月五日から翌々年の明治四十二年十一月三十日まで、一日も欠かさず七百二十五日分の赤子の様子を細い毛筆で偶にスケッチ入りで丹念に記録しているのですが達筆の漢字旧仮名文語体なので判読不能の箇所が多いです。

日露戦争の２年後、京の古い町家の狭い居間でおそらくランプの灯の下で筆を走らせている明治の男の姿が眼に浮かびます。明治の日本の家庭、明治の日本人の一齣《ひとこま＝一場面》の記録としてご覧いただきます。