大正生まれと言っても物心付いたのは昭和です。たしか小学校入学は昭和４年でした。不況の時代が続き子供心にも余りよ
い思い出はないのです。年を重ねていくうちに世の中は満州事変《1931～》、日中戦争さらには太平洋戦争《1941～45》へ
と突入していきました。これらの戦争で亡くなっていったのは殆どが大正人だったはずです。おそらく百万人は帰らぬ人になっ
たことでしょう。

　　戦争と言っても戦って死んだ人よりも、南方などへの転送中に敵の潜水艦や飛行機の攻撃で輸送船《ゆそうせん》が撃沈
《げきちん＝弾丸が当たって船が沈む》され無念の涙を飲んで亡くなっていた人の数のほうがはるかに多かったことでしょう。

　　我が国の今の繁栄は大正人の犠牲の上に成り立っているんじゃないかと思います。私の経験から言うと南方の島に連れ
て行かれ、兵站《へいたん＝戦場で物品の補給や修理を担当する》の補給も無く痩《や》せさらばえて眠るように死んでいった
戦友、彼らは皆２２－２３才だった。彼らの事を思うとき何か悪い事でもしたような複雑な気がします。彼らのご冥福を祈る以
外なすべき事はありません。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ホベン